フリーカメラマンが撮影機材を考察するブログ #4
第四回目は最新HDMIワイヤレストランスミッターのご紹介です。
ニューノーマル時代、皆さん如何お過ごしでしょうか。
自宅で過ごす時間が増えインターネットを利用する時間も増えたのでは無いでしょうか。
メディア側もオンラインサロンやYouTubeチャンネル運営、収録や配信の需要も高まり撮影ニーズやノウハウにも若干の変化が見られます。
さて、今回紹介するアイテムはそんな現代の撮影現場で大きな戦力となるプロ向け機材となります。
野外でも使用できる高画質HDMIワイヤレストランスミッター
Hollyland Mars 400s Pro
以前こちらの旧モデルもあたるMars400sの紹介を行わせて頂きましたが、何度か現場で使用していく中でそれぞれの優位点などが具体的に見えて来たのでその辺りの紹介をしたいと思っています。
皆さんは一つのコンテンツを複数名、チームで撮影される事はありますか?
ワンマンオペレーション時には自分さえ素材の把握を行えればそれで良かったりしますが複数名で撮影チームを組んだ場合、または被写体やクライアント、その他の専門家や担当者(タレントのマネージャーや美容担当)などに画面を共有しながら撮影を行う必要がある場合、カメラ本体の背面モニターをその都度見せる訳にはいかないケースが多々あります。
特には映像の場合に多く、スチルのようにテザー撮影が行えないため工夫が必要になります。
そんなシーンで非常に便利なツールがこちらのワイヤレストランスミッターです。
旧モデル同様、HDMIだけではなくSDIのクロスコンバート出力にも対応しておりHDMIで入力しSDIで出したりまたその逆を見通し120mまでワイヤレスに伝送する事が可能、さらには映像だけではなく音声の転送にも対応しているモデルとなっています。
基本的な性能では送信機1台で4台のスマートフォンやタブレットに同時伝送、または2台のスマホやタブレットと1台の受信機に映像と音声を低遅延で高画質で伝送する事が出来ます。
こちらのProモデルは以前のモデルに比べてより低遅延で高画質に伝送できる様になりました。
伝送遅延 0.1c→0.08c
伝送ビットレート 8Mbps→12Mbps
レイテンシに関してはほぼ変わりません、通常30〜60fpsで映像制作を行う上で同一素材を並べても1フレのズレも発生しないため300Sや400Sと同時に使用しても問題がない事が言えます。
伝送ビットレート12Mbpsとは、YouTube上のFHD(60fpsの場合)のコンテンツの最大ビットレートとなるため、8Mbpsからの向上という事もあり実際に素材を目で見て認識できるレベルで画質が向上しています。
直接ライブストリーミングが行える機能も搭載されたため正にYouTubeの最高画質でワイヤレスで直説ストリーミング配信が可能となりました。
そして何よりも大きいのがUSB-Cでの給電に対応しケーブル一本での安定動作が可能となりました。
外見では本体にコールドシューが付いた事で様々な撮影パターンにフレキシブルに対応できるようにもなりましたし、赤のトランスミッターと青のレシーバーと見分けも一目瞭然になりました。
そんな本製品ですが、唯一大きなネックとして挙げられる点がありました。
それは5Ghz帯の電波を使用しているため、日本国内では衛星通信との干渉を避ける必要がある電波法で規制された帯域を含み、野外での使用が出来ないといった仕様でした。
それが遂に、2021年1月のアップデートでDFS(Dynamic Frequency Selection)を実装
5GHz帯のうち気象観測レーダーなどに優先的に割り当てられる周波数を1分間、サーチしレーダーの干渉が無い事を確認してからその帯域を用いて伝送を行う、といった機能を搭載する事でファームアップを行うだけで野外でも使用できるようになりました。
これだけコンパクトで安定運用が可能な野外でも使用出来るHDMIワイヤレストランスミッターはこのモデルだけ、と言えるレベルに進化をしたMars400 s Pro。
ゼロ遅延で優位性があるAce500に比べても1/2以下といったサイズ感からくる運用機動力はロケ現場などでは特に重宝されます。
ファームウェアのアップデートも非常に簡単で、Fat32フォーマットのメディアにダウンロードしたファームウェアファイルを入れてUSB-C端子に繋ぐだけ、メニューからバージョン情報を確認し、V1.0.1.8以上になっていれば成功です。
さて、そんな大幅アップデートが行われたMars400sProですが、さっそく具体的な撮影シーンの考察をして行きたいと思います。
① 無線フィールドモニターとして
Marsシリーズは非常に高機能なアプリケーションにもその魅力があります。
業務用のフィールドモニターに備え付けられている本格的な機能のほぼ全てが入っているアプリケーションを使用し露出や色味、フォーカスから仕上がりのアスペクト比などを視認性が高いサイズのモニターで確認をしながら撮影を行っても良いですし、同時に4台ものスマートデバイスに伝送できるのでディレクターやクライアント、美容や衣装担当など様々な関係者へのライブモニタリングを兼ねる事も可能です、また音声も同時に伝送可能なため台詞の抜けがないか、騒音は許容範囲かなど複数人それぞれのスマートデバイスから同時進行で確認を行う事が可能です。
私が実際に利用しているシチュエーションも多くがこの用途で、特にはジンバルなどカメラマンが移動しながらフレキシブルに撮影する形態の場合、撮影データを第三者にリアルタイムで確認してもらうためにはワイヤレストランスミッターは必要不可欠です。
② フィールドレコーダーとして
こちらのアプリケーションですが、なんと映像音声の録画機能まで付いています。
H264でデバイスに保存されますのでそのままAirDropなどで共有しても良いですしクラウドストレージにアップロードも可能です、またSNSにそのまま投稿しTwitterやInstagram上でストリーミング再生する事も可能になります。
カメラの操作画面もキャプチャする事が可能になるので操作レビュー系のコンテンツを作成する時にも、わざわざパソコンに繋いで取り込んだりより高価なフィールドレコーダーを購入する必要がなく便利ですね。
12MbpsとYouTube上のFHDコンテンツの最高画質になった事で、用途によってはバックアップを行う事も可能となりました。
③ 遠隔マルチカム撮影
マルチカム撮影を行う場合、ある程度離れた場所に別アングルのカメラを設置する必要がある場合に特に、HDMIトランスミッターが便利です。
例えばゲストや観客のいるライブハウスだったり、来客のあるイベント会場や商業施設の場合、配線が邪魔にならないよう端に這わせて養生テープで止めたりとそれだけで一苦労な作業量です。
しかしMarsシリーズを使用すれば一瞬で遠隔モニタリング環境が整います。
300S、300S pro 400S 400S ProはHDMI = SDIのクロスコンバート出力が可能でBMD社のMultiViewとの相性も最適です。
マルチモニタリン時のレイテンシについて
ワイヤレストランスミッター各シリーズの併用、有線との併用をした場合のレイテンシーを検証しました。
結果としては遅延改善がなされたProシリーズの恩恵は60fps程度では感じられません。
逆にいえば併用しても遅延が発生する心配がありません。
通常のHDMIやSDIでの有線接続にくらべると、トランスミッターとレシーバーのペアでは60fps換算2フレ程度のズレが生じている事が確認できました。
有線接続とスマートデバイスでのWi-fi接続では5~6フレ程度でしょうか、ご覧の映像内のデバイスを参照ください。
有線接続とトランスミッターレシーバでは併用してもよほどシビアにリップシンクなどが必須なライブ生配信でもない限りは気にならないと思います。
収録時のモニタリングとしては必要十分でしょうか。
実際の各レイテンシを動画でも確認頂くには以下、該当部分のみ再生されます。
フルバージョンでご覧になるには再生バーで最初へ戻すか、また全画面で視聴する場合はYouTubeロゴ横の全画面ボタンからどうぞ。
USB-C給電に対応したことでDCが取れない野外イベントなどでもバッテリー1本に委ねるではなく、モバイルバッテリーを装着しておく事で電源の心配も必要なくなりそうです。
如何でしょう、Mars400sから大幅進化したMars400s Proの撮影考察、少しでも参考になりましたら幸いです。
不明点や気になる点があればYouTubeコメント欄をご利用ください。
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